電気自動車

2015年に「パリ協定」が採択されて以降、世界は脱炭素社会の実現に向けて大きく舵を切りました。日本でも、2020年10月に菅首相(当時)が「2050年のカーボンニュートラル実現」を宣言し、同年12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(以下、グリーン成長戦略)」が策定されました。現在、その実現に向けてさまざまな取り組みが動き出しています。そうした取り組みの一つとして、EVの普及推進が挙げられます。
菅首相は2021年1月の施政方針演説で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」旨を発表しました。その後、同年6月に公表された改訂版「グリーン成長戦略」には「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」ことが明記され、事実上、将来的なガソリン車の販売禁止が表明されたと言えます。
今後いっそうEVの普及が見込まれるわけですが、現在の日本と世界の普及状況は具体的にどの程度のものなのでしょうか?

 

日本のEV普及率の参考になるデータが、一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表している「燃料別販売台数(乗用車)」。このデータによると、2021年の日本の新車販売台数の合算は約240万台で、そのうちEVの販売台数は21,139台。割合にすれば約0.9%と、これは世界各国の普及率と比べても特に低い水準です。
では、なぜ日本ではEVの普及が遅れているのでしょうか?
それには、いくつかの理由が考えられます。たとえば車両価格が高いこと、航続距離が短いこと、充電設備(充電インフラ)がそれほど普及・整備されていないこと、ハイブリッド車の市場競争力が強かったこと、そして国内メーカーで性能と価格面の両方を備えたEVがまだ少ないこと……など。
そうしたなか、2021年12月にトヨタが「近未来に向けてのバッテリーEV(BEV)戦略」を発表したことは注目に値します。これは、2030年までに30車種のバッテリーEVを展開し、年間350万台のグローバル販売台数を目指すというもの。国内最大手の自動車メーカーの参入が、日本におけるEVの普及推進にどのような役割を果たしていくか期待が高まるところです。

 

<アメリカ>
全米自動車ディーラー協会(NADA)が発表している「NADA DATA 2021」によると、アメリカにおける2021年の新車販売台数(乗用車等)は約1,493万台で、そのうちEVが占める割合は約2.9%と、日本よりも普及が進んでいることがわかります。前年2020年の新車販売台数に占めるEV比率1.6%と比べても伸びており、アメリカのEV普及は順調に進みつつあるように見えます。
ただし、アメリカならではの特色として、新たに販売されたEVのうち8割弱を電気自動車専門メーカーのテスラ社が占める一強状態が続いていることが挙げられます。2021年にはテスラ社の時価総額が1兆ドルを超え、EVメーカーのベンチャー企業がアメリカ国内に続々と生まれるなど、EV普及への追い風が吹いているようですが、現状ではテスラの販売台数次第でEVの普及率も大きく左右される状況にあるとも言えそうです。

 

<ヨーロッパ>
欧州自動車工業会(ACEA)が発表している「NEW CAR REGISTRATIONS BY FUEL TYPE, EUROPEAN UNION」によると、ヨーロッパ主要18カ国の2021年のEV販売台数(乗用車)は約119万台。2020年と比べて64%増という大きな伸び率を見せています。新車販売台数に占めるEVの割合も11%と、全体のシェア率は1割を超えており、日本やアメリカを凌ぐ大きな数字となっています。なぜヨーロッパでは、これほどEV普及が進んでいるのでしょうか?
理由はいくつか考えられますが、脱炭素を実現するためにヨーロッパ全体で高い基準を設けていることが大きな要因として考えられそうです。

 

<中国>
中国汽車工業協会(CAAM)の発表によると、中国では、2021年の新車販売台数(乗用車・商用車の合計)が4年ぶりに増加。新車販売台数は約2,627万台で、なかでもEVをはじめとした新エネルギー車のインパクトが大きくなっています。
中国ではEVをはじめ、プラグインハイブリッド自動車(PHV)や燃料電池車両(FCV)を含む電動化車両を総じて「新エネルギー車(New Energy Vehicle=NEV)」と呼び、自動車メーカーには一定の販売台数をNEVにすることが義務付けられています。
2021年のNEVの販売台数は約352万台(前年比157%増)、新車販売に占めるNEVの割合は約13%でした。そのうちEVは約291万台(前年比160%増)と急速に普及していることがわかります。
とりわけ中国で絶大な人気を誇っているのが「宏光Mini EV」という、上汽通用五菱汽車(中国の上海汽車と柳州五菱汽車、ゼネラルモータースが合弁で設立)が開発した小型EV。この「宏光Mini EV」は、エアコンを装備した最上位グレードでも60万円前後、エアコンレスのベース車なら50万円を切ることが大きな特徴で、手の届きやすい価格帯が、一般市民を中心に大きな人気を得ている要因になっています。

 

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